Hostess Entertainment Unlimited

Releasesリリース情報

Prophets of Rage - Prophets of Rage

Prophets of RagebyProphets of Rage

アーティスト名プロフェッツ・オブ・レイジ
タイトルプロフェッツ・オブ・レイジ
発売日2017.09.15
品番HSU-10154
レーベルFantasy Records / Hostess
価格2,490円+税

※日本盤にはボーナストラック、歌詞対訳、ライナーノーツ付

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TRACK LIST

01. Radical Eyes
02. Unfuck The World
03. Legalize Me
04. Living On The 110
05. The Counteroffensive
06. Hail To The Chief
07. Take Me Higher
08. Strength In Numbers
09. Fired A Shot
10. Who Owns Who
11. Hands Up
12. Smashit
13. Unfuck the World (Live)*
14. Prophets Of Rage (Live)*
*日本盤ボーナストラック

「世界は勝手には変わってくれない。あなた次第だ。」
正真正銘のスーパーバンド、プロフェッツ・オブ・レイジがデビュー!

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンとパブリック・エナミー、更にサイプレス・ヒルのメンバーが結成したスーパーグループ、プロフェッツ・オブ・レイジが立ち上がり、デビューアルバム『プロフェッツ・オブ・レイジ』を9月にリリース!
アルバムのプロデューサーにはレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの名盤『イーヴィル・エンパイア』や『バトル・オブ・ロサンゼルス 』を手掛けたブレンダン・オブライエンを起用。アルバム・アートワークを手がけたのは、Obeyなどのグラフィック・シリーズやオバマ前大統領の大統領選挙ポスターなどで知られるアメリカを代表するストリートアーティスト、シェパード・フェアリー。
こパブリック・エナミ―の熱狂的で走り抜ける感触とレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの驚愕のギターリフ、サイプレス・ヒルの超人的なパーティー・エナジーが融合し、この時代のアンセムが完成!怒りを込めたメッセージが詰まった重量級アルバム!

山崎智之氏によるプロフェッツ・オブ・レイジ『プロフェッツ・オブ・レイジ』作品解説

"プロフェッツ・オブ・レイジ"とは何と完璧なバンド名であろうか。
パブリック・エナミーのアルバム『パブリック・エナミーII』(原題『It Takes A Nation Of Millions To Hold Us Back』/1988年)収録曲から取ったこの名前。パブリック・エナミー、サイプレス・ヒルという2大ヒップホップ・グループのメンバーがレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン(以下RATM)と合体した新グループであり、2017年という "時代の代弁者=預言者=プロフェッツ"である彼らに、これ以上相応しいバンド名はないだろう。
プロフェッツ・オブ・レイジのラインアップは以下のとおりだ:


- トム・モレロ(ギター/RATM)
- ティム・コマーフォード(ベース/RATM)
- ブラッド・ウィルク(ドラムス/RATM)
- チャックD(ラップ/パブリック・エナミー)
- DJロード(DJ/パブリック・エナミー)
- B-リアル(ラップ/サイプレス・ヒル)


単なるミュージシャンの域を超えて、ひとつの世代に多大な影響を与えてきたアーティスト達が集結したこのバンドを"スーパーグループ"と呼ぶのはたやすいことだ。だが、プロフェッツ・オブ・レイジは時代の必然性に招かれて生まれた集団である。トム・モレロは、このグループを「大統領選イヤーのクソの山に、マーシャル・アンプの大音量で立ち向かう革命的ミュージシャンの軍団」と表現している。
最終的に共和党のドナルド・トランプと民主党のヒラリー・クリントンの一騎打ちとなったアメリカ大統領選挙キャンペーンの真っ只中、2016年5月にロサンゼルスの街中に謎のポスターが貼られ、RATMのウェブサイトで突然カウントダウンが始まったとき、少なくないファンがRATM復活を予想した。ヘヴィなロックにザック・デ・ラ・ロッチャのアジテーションにも似たラップを乗せた音楽とメッセージ性で1992年にアメリカの音楽シーンに殴り込みをかけたRATMは絶大な支持を得てきたが、2011年以来音沙汰がなかった。大統領選やテロが渦巻く混迷の時代こそ、まさにRATM復活の格好の舞台だと思われたのだ。
だが当初から、メンバー達はRATM再結成を考えていなかったという。ザックはソロ・アルバムを制作中で、かつての仲間たちに合流する意志がなかった。そこでトムとティム、ブラッドの3人は、ヒップホップというジャンルそのものを象徴する2大グループのメンバー達を迎え入れることにしたのだった。
パブリック・エナミーとサイプレス・ヒルは、RATMが結成した1991年から彼らにとって大きなインスピレーションだった。パブリック・エナミーのメッセージ性の強い社会派ヒップホップはRATMの原点のひとつだったし、バンドを結成して5回目のライヴで既に同じステージに立っていた。
また、RATMの初期の代表曲のひとつ「ブレット・イン・ザ・ヘッド」はサイプレス・ヒルから触発されて書かれたものだった。RATMはカヴァー・アルバム『レネゲイズ』(2000)にサイプレス・ヒルの「ハウ・クッド・アイ・ジャスト・キル・ア・マン」を収録、ライヴでも披露するなど、多大なリスペクトを表してきた。両者は長年の交流があり、すぐに新グループでの活動が始動することになった。
プロフェッツ・オブ・レイジは2016年5月末から"メイク・アメリカ・レイジ・アゲイン"と題した北米ツアーを開始。トランプ候補のスローガン"メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン"のパロディであるこのタイトルを冠したツアーは同年10月まで続いた。一連のライヴではRATMやパブリック・エナミー、サイプレス・ヒルの名曲の数々がプレイされている。
彼らはまた、オリジナル新曲「ザ・パーティーズ・オーヴァー」とパブリック・エナミーの「プロフェッツ・オブ・レイジ」の新バンドによるヴァージョン、ライヴ・テイクを含むEP『ザ・パーティーズ・オーヴァー』でCDデビューも果たしている。
タイムリーなメッセージを伝えるために、当初はフルレンス・アルバムを作らず、短いスパンでEPを発表していくことを考えていた彼らだが、ファースト・ツアーを経て6人の創造性が刺激されたこともあり、さっそくアルバム制作に着手。そうして完成したのが、本作『プロフェッツ・オブ・レイジ』だった。


『プロフェッツ・オブ・レイジ』は強烈な個性を持った6人が衝突しあい、侵食・調和しあう作品だ。
RATMのヘヴィな演奏にチャックDとB-リアルのラップが乗るというのはまさにドリームだし、まったく異なったスタイルの2人のラップ・バトルのせめぎ合いも刺激的だ。トム・ティム・ブラッドの3人が異なったフロントマンを迎えるバンドはRATM、オーディオスレイヴに続いてこれが3つめとなるが、ブラッドはそれぞれの演奏に異なった個性があると語っている。
「RATMではザックが基本的にラッパーだから、俺のプレイもパーカッシヴな要素が強かった。オーディオスレイヴではクリス・コーネルの豊かでメロディアスなヴォーカルをフィーチュアしていたし、より空間を生かしたプレイを志したんだ。プロフェッツでは再びパーカッシヴなドラムスをプレイしているけど、さらにファンキーなグルーヴを重視した」

①「ラディカル・アイズ」はプロフェッツ・オブ・レイジのアイデンティティを明確に提示したステートメントだ。叫び声を聞き入れられず、危険分子として社会に拒絶される者たちが蜂起するという痛烈なメッセージは、長く音楽シーンで活動してきた彼らがラディカルな姿勢を失っていないことを宣言する。

②「アンファック・ザ・ワールド」はアルバムから先行公開され、ライヴでもアルバム発売に先駆けて演奏されるようになったリーダー・トラックだ。貧困やレイシズム、不安定な社会情勢などを背景に、彼らは世界を"ファックでない=正常な"状態に戻すべく力強いメッセージを投げかけるのだ。

③「リーガライズ・ミー」は近年のアメリカ各州における大麻合法化を背景にしたナンバーだ。コロラド州は2014年1月、嗜好・医療用のマリファナが合法化されたアメリカ最初の州となった。さらにカリフォルニアでも2016年11月に成人の大麻使用を合法化する法案が可決。オレゴン州やカナダのトロントでも嗜好用大麻の合法化が決まるなど、大麻解禁の波が押し寄せている。ピーター・トッシュは1975年に発表したアルバム『解禁せよ』の表題曲で大麻を解禁しろ(legalize it)!と歌ったが、彼の主張が受け入れられる時代が来ようとしているのだ。サイプレス・ヒルは1991年のファースト・アルバム『サイプレス・ヒル』から「ストーンド・イズ・ザ・ウェイ・オブ・ザ・ウォーク」「サムシング・フォー・ザ・ブランテッド」などマリファナを讃えるリリックの楽曲を収録してきたが、この曲では遂に掴んだ自由を喜びながらも、「昼も夜もフィール・オーライだけど明日、また戦いが始まる。俺を合法化しろ!」と新たな戦闘に備えている。

④「リヴィング・オン・ジ・110」はロサンゼルスの110号フリーウェイを題材にしている。高架下では多数のホームレスがテントを設置して寝泊まりしており、この曲では一般市民の生活が貧困と表裏一体であることが描かれている。ネルソン・マンデラの"貧困を克服することは慈善行為ではなく、正義を全うすること"というメッセージから始まるミュージック・ビデオも制作された。

⑤「ザ・カウンターオフェンシヴ」は"反撃"を意味する幕間曲だ。

⑥「ヘイル・トゥ・ザ・チーフ」は政治家や資産階級など"1%の富裕層"への富の分配と、彼らの差別主義が問題提起されている。ここで言及されているジョージ・ウォレスは1960年代から1980年代にかけて複数回アラバマ州知事となり、大統領選挙にも出馬した政治家。人種差別主義者として知られ、公民権運動の"天敵"だった。

⑦「テイク・ミー・ハイヤー」はイントロのスパゲッティ・ウェスタン風ギターから粘度の強いファンキーなグルーヴへと雪崩れ込んでいく。ドローンに見張られる監視社会を歌っているが、そんな状況に甘んじることなく立ち上がる描写がカタルシスを感じさせる。リリックでさりげなく"fight the power"というセルフ・オマージュがあるのが嬉しい。

⑧「ストレンス・イン・ナンバーズ」も前曲に続いて、トリッキーなインストゥルメンタル・パートをフィーチュアしたナンバーだ。RATMの「ブルズ・オン・パレード」を彷彿とさせるイントロからチキン・リフへと繋がるコントラストの妙味が絶妙で、日々抑圧される労働者たちに「俺たちは数で勝る。団結せよ」と促すアジテーションをより効果的にしている。なお「ブルズ・オン・パレード」との関連はイントロだけでなく、リリックの"rally around the family"という一節が共通しているのは偶然ではあるまい。

⑨「ファイアード・ア・ショット」は常に見下される社会的弱者が一撃をぶちかますというリリックだ。彼らがしばしばテーマとしてきた題材だが、そんな中にもB-リアルが「俺はハーブを育てる、みんなに伝えるがいい」と大麻大好きフレーズを挿入しているのが彼らしい。

⑩「フー・オウンズ・フー」は本作で最もアップビートなナンバー。ブラッドはこのリズムについて、ギャング・オブ・フォーからインスピレーションを得たと語っている。社会に抑圧される者たちの"we fucking matter 俺たちは無価値じゃない"というメッセージは、彼らのキャリアを通じて一貫するものだ。

⑪「ハンズ・アップ」はライヴで盛り上がること間違いなしの曲だが、hands upといってもパーティー・ソングではなく、反逆のレベル・ソングだ。この曲においても⑥「ヘイル・トゥ・ザ・チーフ」と同様に"1%の富裕層"への言及があり、"モロトフ(火炎瓶)に点火してカラバサス(ロサンゼルス郊外の高級住宅地)を燃やし尽くす"と威嚇している。

⑫「スマッシット」は"Smash It ブチ壊せ"と"shit クソ"を合体させたタイトル。体制の抑圧との決戦を描いているが、銃を携えた敵に対し、マーシャル・アンプの壁を背にして音楽と火炎瓶で立ち向かう姿は美しくすらある。悲壮感が漂う中、アメリカ人としての誇り、そして新しい時代の始まりへの希望を込めたこの曲でポジティヴに本作を締めくくっているのは、プロフェッツ・オブ・レイジが未来の勝利を確信していることを感じさせる。


2016年のアメリカ大統領選はドナルド・トランプの勝利に終わったが、プロフェッツ・オブ・レイジの戦いは続く。
トランプの大統領就任式は2017年1月20日に行われたが、彼らは同日、ロサンゼルスのテラグラム・ボールルームで"反就任式"イベントを開催。ジャクソン・ブラウンやハウス・オブ・ペインのエヴァーラスト、ヴィック・メンサ、テネイシャスDらゲストに加えて、彼らの盟友クリス・コーネルもステージに上がり、約11年ぶりのオーディスレイヴ再結成も実現した。彼らはバックステージで旧交を温め、「オーディオスレイヴとしての新作を作ってツアーしよう!」という機運も高まったというが同年5月18日、クリスが亡くなったことで、再結成は永遠に不可能になってしまった。
さらにプロフェッツ・オブ・レイジは同年5月に南米、6月にヨーロッパでツアーを敢行。9月から10月にかけてはアメリカをサーキットする。
日本のファンに向けてブラッドが送るメッセージは、プロフェッツ・オブ・レイジ全員に共通する想いだろう。
「もしヒラリーが大統領になっていたら、同じようなクソの日常が続くだけだっただろう。トランプが大統領になったことで、アメリカ国民、そして世界の人々は、より政治や選挙について真剣に考えるようになった。それで、より良い未来が築かれたら素晴らしいと思う。世界を変えるのは大統領じゃない。政治家たちが世界を変えてくれるのを待っていてはいけない。俺たち一人一人が変えていくべきなんだ」 "怒りの預言者"たちの革命は終わらない。



2017年7月
山崎智之
Tomoyuki Yamazaki